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2016-08-12

何のための音楽か

レコーディングに関してもうほとんどの方が
ご存知だとは思いますし、それが今では
普通のことだとは思うのですが、
例えば、楽器を録音して、その録音した音声ファイルの
ピッチ(音程)、リズムやグルーヴ(ノリ)などを
PCのソフト、DAWソフトと言いますが、
それを使って、自分の望むように如何様(いかよう)にも
編集できます。

極端に言えば、ものすごく下手なヴォーカリストが唄を
レコーディングしたとして、それをエンジニアがソフトで編集すれば
いくらでも上手く歌っているようにごまかせます。
音楽をやっていない人が聞くと分からないほどに。
唄以外、楽器でも同じことが当てはまります。

そして、世に出ている、出ていないに関わらずアーティストが
その編集をやっていないことはほとんどないというのが事実です。

ビジネス的なことが最大の理由だとは思いますし、
それ以外に個々に色々な事情があるかなと思います。

4トラックのMTRから音楽制作を始めたというものありますが、
今まで音楽を作ってきて、打ち込み以外、手弾き演奏の
ピッチやリズムに関わる部分の編集は意図的にしてきませんでしたし、
そこまでして音楽を作りたいとも
思いませんでした。

TINÖRKSの場合、ほとんどの曲には自分でプログラミングした
打ち込みのドラム、ベース、シーケンストラックが入っていて、
その上にフルートなどの生楽器やギター、キーボード、唄などを
重ねてくスタイルです。

MIDIで打ち込む時にグルーヴを調整するためにデータを
編集はしますし、コピー&ペーストもします。
なので、決してDAWソフトでの編集を批判しているわけではないのですが、
生演奏の部分に関して、自分のトラックのコピペはしますが、
自分以外のトラックも含めて、ピッチやリズムの編集、
省略するためだけのコピペはしませんし、それらをしたくないと思っています。

その演奏をした人が自分の演奏を自ら編集することは、
まったく気になりません。
それは、その編集も含めてその方の表現、クリエイティビティだと
考えているからです。

DAWソフトを使うまでは、ずっとMTRで音楽を作っていたので、
編集できる範囲はごく限られていました。
なので、生演奏は人力でいいテイクが録れるまで頑張るしかありませんでした。
それが普通だと思っていましたので、
別に苦にはなりませんでした。

MTRが故障してDAWに移行した時に、かねがね話は聞いていた通り、
こんな便利な編集機能があるのかと目からウロコ状態でした。

けれど、いざレコーディングしようとした際に、
ピッチやリズム、グルーヴの編集をしようと
いう気にはどうしてもなりません。

そこの部分に踏み込んでしまうと、音楽を奏でている立場の人間として
嘘をついている気がするからです。

生演奏のピッチの揺らぎ、リズムの揺れは機械では出せないものだから
味があるし、そこが面白い部分でもあるので、
そこを機械の力で変えてしまうと、その人の演奏ではなくなって
しまうと思えるからです。

TINÖRKSの曲で「Houra」(ホウラ)という曲があります。
メインのメロディーはインディアンフルートという
ネイティブ・インディアンに伝わる楽器を
雫が演奏しています。

この楽器、正直に話すと普通に吹いてもピッチ(音程)が
正しくありません。現代の優れた楽器のように
音程が正確ではないのです。

だけど、その正しくない音程が音楽的に面白いし、
他の楽器の音色と組み合わさって、なんとも言えない音楽的な
世界観、雰囲気を作り出してくれます。

「Houra」という曲を制作した時は
MTRを使っていましたので、もちろん音程やリズムを変えたりなんて
できませんでした。けれど、たとえDAWソフトで
レコーディングしたとしても、それらの編集は
やっていなかったと思います。
もしピッチを正確に編集すれば、インディアンフルート本来の
重要な何かを失うことになるからです。

音楽制作=DAWソフトを使うということが
一般的になって、昔と比べて作曲や編曲が
随分身近になりましたが、レコーディングに関して、
「後々、編集できるからとりあえずこのテイクでいいや」という
考え方も同時に普及したことは、とても残念だなあと思います。

音楽を作っていない、演奏していない方が、
そのような考え方を受け入れても仕方ないと思うのですが、
音楽を演奏している、作っている方が、
根本的な音楽の要素に踏み込む編集あり気で
レコーディングするというのはいかがなものかと思います。

自分の考え方のひとつですが、演奏の最も上達する方法は
レコーディングだと思います。

レコーディングで自分の演奏と向き合って、
追い込まれて、いやになって、それでも
いいテイクを取るために何度も録音し続けることで、
演奏が上達すると思います。

それが結果的に音楽が人の心に伝わると思いますし、
巡り巡って自分自身の心に返ってくるはずです。

音楽を作る上で、たとえ世に出る音楽でないにしても
決して嘘はつきたくないといつも考えながらやってます。

そして、それは何のしがらみもない
いちインディーズミュージシャンであれば
なおのことだと。

建水

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