2012-10-07

楽曲にとっての本来の姿

tinörks(tinorks) 4th『ecotone』解説 マスタリング編

_1_



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


『ecotone』が今までの作品と大きく違う点のひとつが
マスタリングという重要な作業にあります。


マスタリングとは

音楽作品制作において、ミキシング(各楽器パートのバランスを整える)して作られた
2トラック(ステレオ)のマスター音源(曲のこと)の音質や音圧などを調整する作業。
アルバムに収録する他の曲との音圧や音質を統一したりすることも含める。

です。


今までの作品は僕がTC electronicのFinalizer Expressという機材を使用して
やっていましたが、今回、本当に幸運なことにyanekaの雄一朗さんから
声をかけて頂いて、素晴らしいマスタリングをやって頂きました。

yaneka(ヤネカ)は今年の北欧の音楽ピクニックに出演されていたので
そのオーガニックなパフォーマンスは記憶にも新しいですが、
ヨーロッパを始め、世界各国でライブをされています。

youtubeでも多くの映像を観ることができますが、中でも特にイギリス、ロンドンにある
かのビートルズもレコーディングしたアビー・ロード・スタジオ (Abbey Road Studios)での
フルートのヨーランモンソン氏とパーカッションのペッテル・ベルンダーレン氏との
セッションは非常に鮮烈です。


今回の『ecotone』に関して
マスタリングの直前からその工程を簡単に書くと、

①30トラック(30個の楽器パート)の各バランス(音量、位置など)を決めて
2トラックにまとめます。この段階である程度音量を上げる作業をしておきます。


②その2トラックにまとめたファイルをWood'n V studioへ送ります。
WAV(ワヴ)ファイルという圧縮しない音楽のファイル形式があるのですが、
それをインターネットで共有サーバーに置いてスタジオ側からそれを
PCへダウンロードしてもらいます。

③ここから本格的にマスタリングの作業が始まります。
アナログとデジタルの機材を駆使して曲を一般的にCDで聴ける「音」に
していきます。

具体的にはものすごく緻密で高度な作業をして頂いているので
ひとつひとつを書くことは不可能ですが、大まかには
その曲の抑揚(音楽的な強弱のバランス)をより発揮させていくわけです。

作業の過程では、こちらの曲のイメージをとても大切にして頂きながら
進めて頂きました。これは立ち合いマスタリングの一番の醍醐味です。
曲が変化していく様子が分かって、とてもわくわくします。


soundcloudにマスタリング前後の曲をupしているので比較できます。

homing マスタリング前
homing(tinörks) by namimum


homing マスタリング後

homimg(ver. tinörks) (mastering at Wood'n V Studio) by namimum


Wood'n V studioにはmade in EnglandのSSL SuperAnalogueサミングミキサーの
X-Desk
が常設されており、それに音を通すだけで、曲の質感が暖かくなります。


後は、PCに実装されている音に関するソフトを色々と試しながら
少しずつ楽曲をより音楽的なものへと変えていくわけです。


マスタリングで使用するソフトの中で代表的なものは

EQ(イコライザー)…音の周波数帯域を変えます。耳障りな音を消したり、
         こもっている帯域をすっきりさせたり。

コンプレッサー…音量の変化の波を揃えて全体の音量を上げます。
        コンプレッサーをかけ過ぎるとラジオみたいな音になります。
       
リミッター…設定したレベル以上の信号が入力された時、その信号レベルに対してだけ
      増幅率が下がり、過大入力を抑え込むことによって、最大レベルを
      均等にそろえます。      


です。

ちなみにWood'n V studio内の電圧はなんと200Vなので
各機材には普通の家庭(100V)よりも、より安定した電圧が
供給されているので、当然、マスタリングを施す音にも
いい影響を与えることになります。


Wood'n V studioを訪れた時のレポートはこちらから

音楽を作る上でマスタリングの作業は、その音楽の価値を最大限に引き出す
重要な最終工程になります。

レコーディングは自宅で録音するといういわゆる宅録方式でも、
マスタリングは機材はもちろん、それ以上にリスニング環境が整っていないと
行えない作業です。


今回、『ecotone』をマスタリングして頂いたことは
tinörks(tinorks)にとって本当に大きな出来事でした。

良質なマスタリングが施されるということは
楽曲にとって自分の本来の姿が表現できる
最も幸せなことだと思います。


Wood'n V studioでは
マスタリングやレコーディングを
随時受け付けているとのことですので、
少しでも気になる方はお問い合わせをしてみては?
良心的な価格で、本当に丁寧に楽曲を扱ってくれます。

tinorksに連絡を頂いてもOKです。


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2012-10-03

虫取り網を持った少女と海を眺める少年

tinörks(tinorks) 4th『ecotone』 ジャケットデザイン解説

『ecotone』

1. fullerene
2. north (norrsken mix)
3. migration (ver1.8)
4. komorebi
5. kaze eno torso
6. homing


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

Ecotone_jackettextless

今回はジャケットの話です。

ひとまず裏表に描かれたジャケットデザインを見てみると…

草や葉、木々が生い茂る上に樹の階段があったり、
銀の柱に支えられた丸い枠があったり、
まるで貝殻が口を開けたようなオブジェの中に海が合ったり、
虫取り網を持った少女と海を眺める少年がいたり、
背景に雲がかかったり、二つに分かれた白い球体が2つあったり。。。

まるでSF映画や空想世界のようです。

『ecotone』の言葉の意味は大辞林によると

「(ecology+toneから)陸地と水面の境界、
森林と草原の境界のような、どちらにも属さず、
どちらとも異なった特徴をもつ移行帯。
豊かで多様な動植物が見られる。」

とあります。

ところで、tinörks(tinorks)の音楽はジャンル分けが
非常に難しいです。

今は一応、影響を受けたという点でジャンルを
「北欧エレクトロニカ」としていますが、
一枚目のアルバム『nayuta』(ナユタ)はアイルランドの伝承音楽を
カバーしつつ、笛とピアノを基調としたアコースティックに
分類され、続く二枚目の『gyrocompass』(ジャイロコンパス)は
打ち込み(機械に演奏させる)のリズムを基本として
ほとんどが日本語の歌詞がついたPOPSに分類されます。

三枚目の『OTO NO MA』からエレクトロニカ路線に入りますが、
こういう風に書いてもお分かり頂けるように、
アルバムごとに音楽ジャンルが変っているので
特定のジャンルに固定することがとても困難です。


こうなった理由は僕が好んで聴いている音楽が
エレクトロニカやPOPS、伝統音楽やクラシック、JAZZであったりと
ばらばらであることを背景に、曲を制作していること主な原因ですが、
自分が好きな音楽のエッセンスの配合率を変えながら、その時々で
表現したいテーマと掛け合わせることによって、
tinörks(tinorks)らしい音楽になっていると思います。


色々な音楽のエッセンスを少しずつ感じることができる音楽。


ecotone(エコトーン)の言葉の意味にもあるように、
「どちらにも属さず、どちらとも異なった特徴をもつ移行帯」には
音楽的な面に関しても多様性が溢れています。


例えば『fullerene』(フラーレン)ではアイリッシュフルートが民族的な奏法で
演奏しつつ、一方ではエレクトロニカの手法を取り入れた細かく刻んだリズムで
ノリを出しながら、ギターは環境音楽やアンビエントのように漂い、
シンセイサイザーの音はPOPSでも使用される明るい電子音で
和音を鳴らしています。

他に収録されている曲も同様にいくつかの音楽ジャンルのエッセンスが
掛け合わさって曲が形成されていますが、
そういった音楽的な現象を視覚化したものが
『ecotone』のジャケットデザインになっています。

もう一度、ジャケットを見てみると…

Ecotone_jackettextless


植物群は「fullerene(フラーレン)」の世界観を象徴し、大小2個の球体は、
丸い音色でビートを刻むリズムを、
背景に雲がかかる空へと近づく場所は「風へのトルソ」を、
母なる海を見つめる少年の心は、きっと原点回帰していて、
黄色の蕾(つぼみ)が森から発芽している様子は、冬に制作した
『OTO NO MA』で種を植えてからの時間の経過を表して…という風に
あまりに説明すると蛇足になるので止めますが、
観た人それぞれに色々な解釈やイメージがあると面白いですね。

ちなみに、CDの盤面にもジャケットと同じ絵がデザインされていると思います。
でも、よく見ると葉や雲の位置が少し違っています。

それから球体を引き連れた虫取り網を持った少女が歩く場所も異なっています。
彼女がどこへ向かうのか、それは誰にも分かりませんが、
CDを手にとった人が、封を開けて中のCDを取り出して
その盤面を視界に入れるまでのわずかな時間の経過を表現しました。

CDのジャケットに描かれた世界の時間も、まるで現実の世界と
同じように進んでいるように。

ほんの少しの時間ですが、『ecotone』の1曲目『fullerene』が
始まるまでのイントロ(導入部)として、わくわくして待って頂ければ、
制作者冥利につきます。


次回は、ジャケットに使われている阿波和紙について少し。

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2012-10-02

四次元的な幕を翻すように

tinörks(tinorks) 4th『ecotone』全曲解説

『ecotone』

1. fullerene
2. north (norrsken mix)
3. migration (ver1.8)
4. komorebi
5. kaze eno torso
6. homing


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


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6. homing

ホーミング

曲名は帰巣という意味です。
その意味から発展させて原点回帰のテーマを込めました。

夕暮れ時の帰り道、黄昏色の空には長くロケット雲がかかり、
道行く人の影が長く伸びている光景。

今日一日にあった出来事がまるで雲が流れるように
ゆっくりと明日へ連なっていく時間の流れ。

その経過の中で自分を見つめ直して、
行く先への方向修正をして…

という風に自分の行くべき方向とそれを
支える核となる原点(ルーツ)を意識できればと
思って曲をアレンジしました。


ライブでは頻繁に演奏している曲のひとつで
set list(曲順)の最後に位置することも多く、
曲のテーマも関係して、この曲を演奏する頃になると
今日のライブも終わりだなあと切なくなります。

Hokupiku_from_pa

この『homing』という曲、制作したのは
今では活動休止となっているバンド
「ヤネトロニカ」の時でした。

※ヤネトロニカに関しては『north』の曲解説の欄をご覧下さい。

その時のアレンジはアコースティック・ギターがアルペジオ(和音をひとつずつ弾く奏法)的に
リズムパートも担いながら弾いていたので、僕は曲の中で自由にキーボードを弾いていました。


ヤネトロニカは活動休止となったわけですが、この曲には特別な愛着があり、
どうしてもお蔵入りにしたくありませんでした。


ちょうど一年前、2012年の秋に新メンバーが加入したことをきっかけに
『homing』のアレンジを変えればライブで演奏できることを思いつき、
tinörks(tinorks)でカバーすることを決めました。


以前はアコースティック・ギターが担当していたパートを
コード(和音)は以前とほぼ同じで、フレーズだけを変えて
キーボードに置き換えました。


曲の一番初めに鳴る音がそれに該当しますが、
基本的には2つのコード(和音)の繰り返しで
それぞれの楽器が少しずつ変化しながら展開する
ミニマルミュージックです。

同じフレーズを繰り返し演奏するので
後半部は一種のトランス状態になりながら
ライブでは心地良くなっています。

曲中では『migration』(ミグラフーン)と同様に雫の
スウェディッシュ・ヴォイスが入っています。


Dit jag rill
(帰ろうとする場所)

Landskapet som breder ut sig dar
(そこに広がる風景)

Forsvinner,visar sig igen
(消えてまた現れて)

Aven vinden vill sova
(風さえ眠ろうとする)

skymning
(夕焼け)

gohem
(帰路)

till min en hemstad
(僕の家へ)


上記で書いた夕暮れ時に思う心象風景を詩にしました。

メロディオン(SUZUKI製はこういう言い方をします。鍵盤ハーモニカのこと。
ピアニカは同じ楽器のYAMAHA製の言い方)

が、曲中で印象的に響いていますが、その音色は郷愁的というか
懐かしい風景を思い出させてくれるように感じたので、
メインのメロディーを担うようにアレンジました。

松村さんが担当するギターは今回もギターの音で鳴ってはおらず
夕暮れの光景にまるで四次元的な幕を翻(ひるがえ)すように
立体的に曲を包み込んでくれています。

メロディオンとギターの距離というか奥行きがとても面白く、
その間でキーボードを弾いている不思議な感覚です。


この曲も他の収録曲と同様にメンバー3人が全員、メロディーを弾いています。
メロディオンのパートが一番目立ちますが、それぞれが
メロディーを弾いてそれを重ねてひとつの曲を形作っています。

原点回帰するにも、その時々で色々な思いや状況があると思います。
原点に行きつくにも、時に迂回したり、不本意にも回り道になったり、
意外にすんなり辿り着いたり。

時に原点が何か見えなくなったり。

Candle_2

でも、色々な思いや遠回りや不本意な状況があればあるほど、
それらに反発、抗うようにして自分の原点や核が
露(あら)わになるという場合も多々あると思います。


未来に進むというのは、自分の原点を知るという理由も
ひとつあるように思います。

この曲はとてもほのぼのした雰囲気ですが、
ライブで演奏する度に今日の日も未来に繋がっていくと
気付かせてくれます。

終着地点はまだ見たことがない原点かもしれないと。


tinörks(tinorks)
4th album

『ecotone』

1. fullerene
2. north (norrsken mix)
3. migration (ver1.8)
4. komorebi
5. kaze eno torso
6. homing


阿波和紙ジャケット仕様。
HP、ライブ会場で発売中。
ダウンロードでも販売中


『ecotone』全曲解説、とても長文になりましたが、
読んで頂いてありがとうございます。


次回は『ecotone』ジャケットに隠された話を少し。

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2012-09-29

心の奥行きは音楽の奥行き

tinörks(tinorks) 4th『ecotone』全曲解説

『ecotone』

1. fullerene
2. north (norrsken mix)
3. migration (ver1.8)
4. komorebi
5. kaze eno torso
6. homing


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

5. kaze eno torso

風へのトルソ



アイリッシュフルートが印象的な曲です。
トラッド(伝承曲)ではなく、現代的でかつ
エレクトロニカな電子音でアレンジされた曲で、
フルートがメロディーを演奏するのは
珍しいかなと思います。


アイリッシュフルートとは
この楽器を購入したミュジカミリオンに
解説が掲載されているので引用します。

「アイリッシュ・フルートはもともと19世紀の
イングランドでオーケストラに使用されていた木製フルートでした。
その後、すべての指穴にキーを用いた金属製のフルートが誕生し、
木製のフルートは一般的には使用されなくなりました。
しかし、アイリッシュなどのトラッド系の奏法のためには
指穴を直接指で押さえる必要があり、そのためにトラッド系の
フルート奏者達だけが木製のフルートを使い続けることになったのです。
このことからこれらの19世紀の木製フルートは「アイリッシュ・フルート」と
呼ばれるようになりました。従って、この呼び名は
「アイルランド製のフルート」という意味ではありません。
実際、今日でも一部の奏者が使用しているオリジナル楽器の多くは、
当時のロンドン(イングランド)で製造されたものです。
このため英語の正式名称では "English Simple System Flute" と呼ばれています。」

tinörks(tinorks)で使用しているものは、
イギリスのメーカー「ディクソン(Dixon)」のものです。

Hokupiku_flute


3つの管からな成り、上部管と中管の間の隙間によって
多少のチューニングが可能です。

松村さんのギターは2種類収録されていて、左から聞こえるのは
ガットギター(クラシックギター)で、右から聞こえるのは
エフェクトでプロセッシング(加工)されたエレキです。

どちらも風のイメージを包含していますが、前者は
高地の乾いたもの、後者は低地のわずかに湿ったものの
雰囲気を醸し出しています。

リズムトラックはいつも愛用しているAKAIのMPC1000という
サンプリングマシンでプログラムしました。

Mpc1000edit


サンプリングマシンというのは、その名の通り
好きな音やフレーズを取り込んで、音程や長さ、
明暗を編集したり、加工したりできる機材です。

任意に取り込んだ約数百種類の音の中から
曲のイメージに合った音を選択して
まるでドラムを叩いているかのように
曲のリズムセクションを作成しています。

tinörks(tinorks)の曲のほとんどのリズムトラックは
このMPC1000でひとまず制作し、レコーダーとなる
MTR D3200と同期しながら録音しています。

今回はメタロフォン(小型の鉄琴)の縁を叩いたような音
数種類を編集したものを基本として制作しました。

とても輪郭のはっきりした固い音ですが、
それがフルートやギターの音とコントラストを描いています。


そしてマスタリングの作業によって奥行きと臨場感が生まれて、
まるでライブで聴いているかのような雰囲気になっています。

タイトルの『風へのトルソ』は風へ身体を預けて
しまいには同化していく様子を込めて名付けました。。

トルソ(torso)というのはイタリア語で、
手、足、頭部を欠くかあるいは省略した胴体だけの彫像のことです。

ずっと以前にシュルレアリスム展だったかな。。。で観た
ダダイズムのジャン・アルプの「植物のトルソ」(1942年)の
曲線の残像がずっと頭の中にありました。

Torso_2

トルソという言葉をいつか音楽で使ってみたいという
憧れがありましたが、今回ついに夢が叶いました。


モチーフとなったのは風とフルート。


風のフルートという一人称で平面的なものではなく、
風へ捧げるフルートの音にしようと。


風とフルートの間には空間があって
フルートの音色とともにその距離が
少しずつ縮まって、やがて自身が風になって
空へもすら同化していく、その自由と光彩。


体内の息を使って音に変えるというフルートの構造から
イメージを広げてみると、演奏者の生命の躍動を音色に
変換しているとも解釈できます。


この曲のkey(調)はDm(ニ短調)ですが、
後奏部でC(on F)に転調させています。

Dm(ニ短調)で始まってDmで終わらず、C(ハ長調)で終わります。


曲の始めに存在していた主体(フルート)が
曲の終わりでは別の主体(風や空)へと姿を変えるということを
音楽的に表していますが、
後奏部で後ろの方で鳴っているふわっとした
ギターの音が前に迫ってくる場面も
それを助長しているように受け取れます。


tinörksの音楽は聴く人が色々な場面や風景を
描きやすい雰囲気があると思いますが、
この『風へのトルソ』もそれに違わず自由な解釈で
聴いて頂いて、それぞれに物語や世界観を
どんどん広げていくと楽しいと思います。

心の奥行きは、きっとそのまま音楽の奥行きになるはずです。

Load_to_heart


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2012-09-28

自然界にひとつとして同じ木漏れ日はないように

tinörks(tinorks) 4th『ecotone』全曲解説

『ecotone』

1. fullerene
2. north (norrsken mix)
3. migration (ver1.8)
4. komorebi
5. kaze eno torso
6. homing


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4. komorebi

コモレビ



このアルバムの為に書き下した新曲です。
タイトル通り木漏れ日がテーマです。

偶然にもこの曲をライブで初めて演奏した場所が
万博記念公園で開かれた「北欧の音楽ピクニック 2012」
夏の花八景ステージの木漏れ日の下でした。

演奏した時間は11時くらいからでしたが、
当日は天気予報の降水確率50%をくつがえす
奇跡的な青一色の晴天でした。

当時の写真からも分かるように大きな樹々2本の
ちょうど間に楽器をセッティングして演奏したわけですが、
その樹々にかかる枝と無数の葉の隙間を縫うように
幻想的に木漏れ日が射し込みました。

Forest_3

演奏中はゆるやかな風が、枝と葉をなでる場面があり、
地面に描かれた木漏れ日の影が穏やかに波打ちます。

演奏中、幾度となく空にかかる枝や葉を見上げると
まるで呼応するかのように大きくリズムを刻んでいました。

それは曲の世界観と現実の場面がちょうど
オーバーラップした瞬間でした。


曲中になんどか現れるいくつも重ねたコーラスは
林立する樹々の間を駆け抜ける風の音と、それが枝や葉に触れて
反射して再び響く様子を表しています。

7種類に分けた声を、一部は波形を反転させて伸ばしたりしながら重ね、
それらが浮遊するギターの音と相乗しながら
幻想的で透明感のある雰囲気を醸し出していると思います。

中間部で登場する鉄琴のような音は、
ドイツのgoldon(ゴールドン)という知育楽器メーカーの
metallophon(メタロフォン)という楽器です。

Metallophon_2

1オクターブ少しのC(ハ長調)のキーを基本に、
F#(ファ#)とB♭(シ♭)の音を個別に付けかえが可能で、
かつ底部にサウンドホールが付いているものと、
クロマチック(半音階付き)のものと2種類をtinörks(tinorks)では
曲によって使い分けています。


知育楽器といえども侮れない綺麗な音で、加えてピッチ(音程)も
正確なので、大変使い勝手がよく、他の曲でも時々登場します。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


この『komorebi』は今回『ecotone』の為に作った曲なので、
当然、まだライブではほとんど演奏していません。

tinörksの曲はライブと音源ではアレンジが違いますが、
この曲もそれに違わず、北欧の音楽ピクニックとその5日後にあった
Fagel Blaでのライブではアレンジを変えました。


変えるというよりも、演奏していく中で自然とアレンジが
変って行きます。


音楽は生き物であるというひとつの証明のようなものですが、
それがあるから飽きずに弾き続けることができるかなとも
思います。


自然界にひとつとして同じ木漏れ日はないように、
『komorebi』もこれからきっと変化し続けるだろうと思います。


Forest_4

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2012-09-27

位置へほんの少しでも近づけること

tinörks(tinorks) 4th『ecotone』全曲解説

『ecotone』

1. fullerene
2. north (norrsken mix)
3. migration (ver1.8)
4. komorebi
5. kaze eno torso
6. homing


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


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3. migration (ver1.8)

ミグラフーン

インディアンフルートが核となるメロディーを担当する
ゆったりと展開する曲です。

インディアンフルートは北米のコロンビア台地、平原、森林地帯に住む
部族の間で使われていたレッドシダー(アカスギの一種)で出来た縦笛を指すそうです。
別名「愛のフルート(ラブ・フルート)」とも呼ばれ、男性が女性に愛を伝える際の
道具として使われていました。


穴の数は5つで音は下から

ソ シ♭ ド レ ファ ソ

Gmのキーに近いです。


3rd『OTO NO MA』にも収録されていますが、
今回は松村さんの空間ギターを追加し、
各楽器のバランスを一からやり直し、
イントロ部を短くし、以前のmixとは変えました。
トラック(各楽器パート)自体は変更していないので
マイナーチェンジという理由から(ver1.8)にしました。


この曲には冒頭でヴォイス(声)を入れています。
聞き慣れない響きだと思いますが、スウェーデン語です。

内容は、


när plats luft
(nar plats luft)
その時 その場所 その空気


där vi ska vara
(dar vi ska vara)
僕らがいるべき場所


som vi ska vara
僕らがあるべき姿

※文字化け時は( )内表記

とても抽象的な内容ですが、
渡り鳥の生態をモチーフにしています。


渡り鳥は食料や気候変動に対して
最も適した居住環境を求め危険を顧みず遠くへと渡ります。
そうした方法が様々な外的変化に対応、順応する
最も良好な手段であると彼らは判断していると思います。

このことを考える中で人にとっても今いる場所が
最も適した場所、位置であるのかという問いが
生まれてきました。

単純に移住環境を変えるという引っ越しや
仕事を変える転職のことを述べているのではなく、
もっと本質的な理由で考えるようになりました。


渡り鳥の生態からは少し飛躍した考え方になりますが、
ある人の現在のとりまく諸々の状況がはたして、
その人が本来望む状況や環境であるのかということ。

社会的な多くの制約、圧倒的多数の価値観の流布によって
本来その人が発揮するべき良心的な本能を押し殺しながら、
また押し殺されながら過ぎる日常はとても
もったいないと個人的には思っています。

その人が本来持つ才能や個性を本能的に発揮できる
位置へ(環境ではなく)ほんの少しでも近づけることが、
人生を送る上で重要ではないかなと思います。

tinörks(tinorks)をする前に活動していた
ユニットは結果が総じて散々なものでした。
散々というよりも無反応という言い方が適切かもしれません。


しかし活動スタイルやその方針を本来自分が望むものへ
変えてから少しずつ状況が変わり、今では出会える人も
明らかに変わりました。


ひとつの経験談かもしれませんが、
本来居るべき位置にいなければ、
いかに努力しようとも反応そのものを
得ることはできないと思います。

環境は変えれます。しかし自分がいる
位置を変えるには特別な意識が必要だと思います。


どういう行動で社会と結びつくのか、
どういった人と出会いたいのか、
何で繋がりたいのかなど、を考えていく内に
その人の本来いるべき位置が明確になるように思います。

そしてどこに渡ればいいのかがなんとなく
見えてくるのかなとも。

Fagel_indian_2


音楽の話から逸れたので、元に戻します。

tinörksの曲(自分が作る曲はほぼすべてに該当しますが)は
クラッシュ・シンバルが出てきません。
(※クラッシュ・シンバルというのは曲の展開部などで
鳴る「ジャーン」という破裂音)

かつバスドラム(※以下BD ドラムセットの中で最低音のドンという音)の
音数も少ないのも特徴です。


この曲も冒頭少し経ってから鳴る低音はベース音で、
BDはというとメインのモチーフが登場する後半部から加わります。
それも小節の頭のみに遠慮がちに。

意図的にBDの音を減らし、クラッシュシンバルの音を
全く使わないようにしています。

シンバルの音が個人的にはあまり好きではないというのも
理由のひとつですが、大きな理由としては、
音の映像を切りたくないという意図があるからです。


この『migration』を聴きながら、例えば渡り鳥が大地や大海原を
飛んでいく様子を思い浮かべるなら、曲の展開部でもし
クラッシュシンバルが鳴ればそれ以降の映像(音楽)の意味が変って
しまうからです。映像(音楽)が区切られてしまいます。

曲の始めから終わりまでワンカットで丁寧に淡々と映し出していく
様子が音楽的にとても気にいっているので、僕がアレンジする曲には
クラッシュシンバルが出てきません。

(※過去作品の『nayuta』『gyrocompass』『OTO NO MA』ヤネトロニカの作品にも)


スタジオで音を合わせて間もない頃は、
ライブのアレンジに悩んだ記憶がありますが、
ギターの松村さんも音数やフレーズを
とても上手く調整してくれたので、
今ではライブでも演奏率が高い曲のひとつです。

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2012-09-26

北欧への景色を日本の日常と繋げる為に。

tinörks(tinorks) 4th『ecotone』全曲解説

『ecotone』

1. fullerene
2. north (norrsken mix)
3. migration (ver1.8)
4. komorebi
5. kaze eno torso
6. homing


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


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2. north (norrsken mix)

ノース (ノルフェーン ミックス)

norrskenというのはスウェーデン語でオーロラの意味。
北方の光、英語のnorthern lightに該当します。

20代半ば頃にmumtapehapnaレーベルなどの音にとても惹かれ始め、
北欧エレクトロニカ、フォークトロニカに急速に影響を受け始めました。
(※最近ではamiinaefterklangも)

その頃、tinörks(tinorks)はまだ活動していなくて、音楽を中心に
北欧カルチャーへの憧れだけがずっと水面下にありました。

囁くようなヴォーカル、「ブチブチ、カツッカツッ」といった
グリッチノイズやクリック音でリズムトラックを形成したり、
波形を刻んでグルーヴを生み出すカットアップといった
独特の手法が特徴ですが、電子音を中心としていても
ピアノ、ハープやバイオリンなどの弦楽器も組み合わせ、結果として
自然と耳に入るような柔らかくて優しい音がとても印象的で魅力的に思えました。
そしてなぜか心がほっこりする物語の要素も感じることができました。


tinörksの活動を始めて2枚目のアルバム『gyrocompass』を作る中で、
そのエレクトロニカの影響をにじみ出そうとしていましたが、
作品のコンセプト上、物語の要素は出せても、リズム的な影響を
表に大きく出すことは出来ませんでした。

そんな中、フォークトロニカ(生楽器と電子音を組み合わせた音)をコンセプトとする
バンド『ヤネトロニカ』(yanetronica)を結成することになります。

このバンドはギターとキーボードと数種の生楽器をそれぞれ担当する3人組で
構成された、唄ものを基本とするスタイルで、リズムトラックは
僕がプログラミングした打ち込みのトラックを使用していました。

[ヤネトロニカ/砂浜エコー]
砂浜エコー[sunahama echo] by namimum


そのトラック制作の中で、今まで水面下で憧れていた北欧エレクトロニカの
音楽的手法を幸運にも自然と実践できたわけです。


メロディオン(ピアニカ)、柔らかい電子音、アコースティックギターを
グリッチノイズやカットアップを取り入れたリズムトラックの上で
まるで浮遊させるように展開させていく曲。

聴いていると自然と心がほっこりとするように、なんとなく前向きになれる曲。

それらが、北欧カルチャーへの憧れに突き動かされるようにして書いた曲が
初代ヤネトロニカ版の『north』です。


2枚の小作品、音源数としては6曲を残し、残念ながら短期間で
バンドは活動休止となりましたが、そのエッセンスは並行して
活動していたtinörks(tinorks)で受け継ぎました。

tinörksで2nd『gyrocompass』を制作した後、
結果的に過渡期となる小作品『OTO NO MA』で
ライト・エレクトロニカ(直訳すると軽い電子音)へとシフトし
ライブでtinörksとしてのエレクトロニカの立ち位置を模索していました。


そんな折、2011年10月、ギターの松村さんが加入し、
彼のギターらしくないギターの音がtinörksに
新しい側面をもたらしてくれたのをきっかけに
活動が大きく変わることになります。

それまでもtinörksとしてライブで『north』を演奏していたのですが、

松村さんが加入後、さらにアンサンブルの深みが増し、
結果、今回『ecotone』に収録したオーロラver.へと繋がります。

tinörksはこれまでに二人のアップライトベース奏者が加入した時期が
ありますが、現在は僕が打ち込んだシンセベースをバックトラックに
入れています。

ライブではベースも含めたリズムトラックはMTRから流しているので、
雫、松村さん、僕の3人がいわゆる上物(リズムを担当するパート以外)を
演奏します。

僕が曲をアレンジする上でのポリシーのひとつが、leadパートに対して
他の奏者全員がカウンターメロディー(主旋律に対して副旋律のこと。いわゆる裏メロ)を
演奏するという考え方なのですが、この『north』という曲は
まさにそのアレンジに当てはまります。

一番わかりやすい場所は後半部の一番盛り上がる所で、
メロディオンは音符の長いフレーズを、ギター①は8分音符でリフを、
ギター②はゆったりめなフレーズを、キーボードは
2分音符で和音(コード)の一番高い音を弾いています。

メロディーを担当するのはしいて言えばメロディオンですが、
例えば、メロディオンとギターをミュートし(消す)、キーボードの音だけを残しても
音楽としては成立します。またその逆でギターのパートだけを残しても
同じことが言えます。

つまり、4つのメロディーが同時に響くことによって
音楽として、ハーモニーとして厚みと深みを生み出しているわけです。

そして各パートが聴きづらくならない様に、空間に音を分けて配置しています。
右上の方にメロディオンを配置したり、手前真ん中に
キーボードの音を持って来たり、左右の端にギターを振っていたりと
mixの作業を行いました。


曲の一番最後の方で少しずつ大きくなる音は
実はギターの音で、曲のある一部を抜き出して
その波形を反転させ、かつ引き伸ばして使いました。

物語の最後でオーロラが頭上目の前に迫り、星降る夜空に翻る様子を
描いています。


イメージの中で北欧への景色を日本の日常と繋げる為に。

※ちなみにこの『north』にはベースを強調した
sub bass mixのヴァージョンが存在します。

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2012-09-25

バックミンスター・フラーにちなんで、『フラーレン』

tinörks(tinorks) 4th『ecotone』全曲解説

『ecotone』

1. fullerene
2. north (norrsken mix)
3. migration (ver1.8)
4. komorebi
5. kaze eno torso
6. homing


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


_1_

1. fullerene

フラーレン


偶然、エデンプロジェクトについて知ったことが曲制作の始まりでした。


エデンプロジェクト(official siteはこちら)とは、イギリス コーンウォール州にある
巨大な複合型環境施設で、陶土の採掘場の跡地を植物の楽園に
変える目的で始まったプロジェクトです。

Eden_project_geodesic_domes_panoram

透明の半球体はバイオームと言われるジオデシックドームで、
バイオームの中には、世界中から集められた植物が栽培されています。

ジオデシックドームとはバックミンスター・フラーによって考案されたドームです。
正三角形に組み合わせた構造材を多数並べることによってドーム構造を形成しているもので、
60個の炭素原子からなる分子、C60は一部の人々がジオデシック・ドームを連想する為、
バックミンスター・フラーにちなんで、『フラーレン』と呼ばれています。

というのを興味があって調べていた時に、この『フラーレン』という言葉に出会いました。


学生時分からバックミンスター・フラーには興味があり、
ちくま学芸文庫の『宇宙船地球号 操縦マニュアル』(松岡正剛さんの千夜千冊から)や
『バックミンスターフラーの世界』を読んでましたが、
今回、偶然にフラーのコンセプトと描きたい曲のイメージが重なって
この『フラーレン』という曲が生まれました。

このバイオームはセルフクリーニング機能を有し、かつリサイクルも可能で
耐久年数は30年程だそうです。


また、駐日英国大使館のサイトによると

「エデン・プロジェクトの基礎を成すテーマは生物多様性であり、私たちが非常に幅広く
自然界に依存していることを示しています。それを最も効果的に伝えるために、
トウモロコシ、バナナ、コーヒーなど、世界の一般的な作物であり、
私たちの元気の源でありながら、育っているところをなかなか見たことがないものに、
特に焦点をあてています。エデン・プロジェクトの有益な作物群は、世界有数のものです。
植物をテーマとして掲げていますが、人間としての私たち、その生き方や
価値なども取り上げています。人間がいかにして数多くの方法で自然に依存しているのか、
人間を持続させてくれているものを人間がいかに保護・持続させていく必要があるのか、
そして自然に対して大きな敬意と注意を払っていかに生きる必要があるのかということを紹介しています。」

とのことです。


人が自然に依存して生きているということは、日常の中でなかなか
意識することは少ないと思いますが、一方、自然の力を垣間見せられた時は
自然を意識せざるをえない状況になると思います。

それらを踏まえて上で、音作りに関しては、ドームの中でゆるやかに成長する植物の様子に
焦点を当てて展開させて行きましたが、曲の最後、後奏の部分で登場する
ロケットの噴射音のような音は、植物が成長しすぎてドームを破り
空へと突き抜けていく様子を表しています。

自然を人の手では決して制御できないという、まるでナウシカの世界のようですが、
人にとって脅威になりえる自然は、人以外にとっては脅威ではないこともある
ということも言えると思います。


また一方、制御しないあるがままの自然は最も美しいという、侘び寂びに
通じる考え方もこの曲に含まれているかもしれません。

初期の頃に録音したアイリッシュフルートはマスタリングの直前で録り直してます。

松村さんのギターはやはり質感がとてもきれいで『ecotone』に
収録されているギタートラックの中でも、特にこの曲はフレーズが柔らかい気がします。

機材的には恐らくkaoss pad quadとPCでプラグインのエフェクトを
重ねていると思います。

中間部の落ち着いている所、後ろの方で鳴っている「こつっこつっ」という音は
メタロフォンのふちを叩いたのを音程を下げて使っています。

土の呼吸というか、植物の根っこの部分を表現しました。

一番最初に鳴る「ブーン」という音は僕がライブで弾いている
スウェーデンのメーカーCLAVIAのnord lead2の音です。
かれこれ10年程愛用してます。

Nordlead2


コード進行は

Gsus4 | Gsus4 | C/D | C/D

の繰り返し。とてもミニマルな曲です。


ミニマルな展開の方が、弾くフレーズの自由度が増すので
気に入ってます。単調になる危険性もありますが、
この曲は植物の成長というテーマに沿って書いたので、
そのコンセプトに沿いながら音を少しずつ変化させ
無理なく展開させていくことができました。


ギターの松村さんが加入し、その直後に完成した
最初の曲なので、tinörksにとってとても重要な曲です。


そういう理由もあって、CDジャケットに植物を
いくつか印象的なモチーフとして入れました。

to be continued...

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