
僕が尊敬するモーリス・ラヴェルの自動演奏ピアノ曲が収められたCD「コンドン・コレクション3(作曲家による自作自演!)」を幸運にもユカリナさんから貸していただいて興味深く聴きました。
ラヴェルはドヴィッシーと並び賞される印象主義の作曲家で若い頃は自分でもピアノを演奏していたことで有名です。そんな彼の生前の貴重な演奏を記録したものを生ピアノで聴けてしまうということで、自然と胸が踊ります。
コンドンコレクションとは
「拙劣な録音形態しかなかった当時、名手たちの演奏を忠実に記録し、再生する方法として考案されたリプロデューシング・ピアノ(自動再生ピアノ)。そのペーパーロールに記録された演奏。当時の演奏者のペダリング、テンポなどを忠実に再現したもの。」(CD付属の帯び文から抜粋。一部省略)
まず一聴したときにとても印象的だったのが、そのピアノの質感。余韻が暖かく、オーガニックな色彩を帯びた波長とでも形容されるかもしれない演奏者のオブラートに包まれているような音の輪郭。それは録音時のエンジニアの手腕が大きいことは否めませんが、それよりも、これがラヴェルの演奏に限りなく近いものであるということを思うと、自分が同時代に生きているような不思議な感覚に囲まれ、そしてその浮遊するハーモニーの素晴らしさと、可能性を知らず知らずのうちに教えてくれているような誇り高い気分になりました。
ラヴェルを知ったのはある日ふと耳にした「水の戯れ」という曲。
その音の連続とハーモニーの移り変わりに現代の音楽では得られない何かに引き寄せられたのを覚えています。
その何かというのは、その音の向こう側つまりバックグラウンドにあるその時代の空気であったり、人々であったり、時代の流れ、人々の価値観や思想、審美眼ではなかったのではないかと思います。
CDにはラヴェル最後のピアノ曲「クープランの墓」(第6曲)、「鏡」(第2曲、第5曲)、「亡き王女のパヴァーヌ」など8曲が収録されています。
特に2曲目の悲しい鳥~「鏡」第2曲のピアノ余韻、倍音がその奏法とも相まって、曲の奥行きの深さへと誘ってくれたのが印象的でした。
「亡き王女のパヴァーヌ」のテンポは以前聴いたことがある演奏家のものよりも速く、淡々としていたことに胸打たれました。
そして、静寂の中でかすかに弾けるピアニッシモの音に時間がとまる感覚を感じました。
M・ラヴェルの残したすべてから、音楽の指針となるエッセンスを全身を通して吸収し、哲学できる喜びに感謝して...。